「せっかく中古マンションを買ってリノベーションするなら、壁付けキッチンを憧れのアイランドキッチンに変えたい」
「お風呂のサイズを広げて、洗面所の位置も大胆に変えたい」

理想の住まいを思い描くのは楽しい時間ですが、いざ業者に相談すると「そのマンションでは水回りの大幅な移動はできないかもしれません」と言われてしまうことがあります。

なぜ、自由なはずのリノベーションで「移動できない」という制約が生まれるのでしょうか?
その最大の理由は、「排水管の通り道」にあります。

この記事では、マンションの水回りが移動できない構造的な理由と、それでも移動させたい場合に検討すべき対策について解説します。

画像1枚目 │ マンションの水回りが移動できない理由は?構造の仕組みとリノベの対策

 

築年数が古いマンションだと、特に水回りの移動が難しいって聞いたけど本当?

水回りが移動できない最大の理由は「排水勾配」

給水管(水が出る管)は水圧がかかっているため、比較的自由に引き回すことができます。しかし、問題になるのは「排水管(水が流れていく管)」です。

排水管には圧力がかかっていないため、水が高いところから低いところへ自然に流れるように、管に傾斜(勾配)をつける必要があります。

排水に必要な「勾配」のルール
家庭の排水をスムーズに流すためには、一般的に「1/50〜1/100」の勾配が必要です。これは、配管が1メートル進むごとに1〜2センチメートル下がる傾斜が必要という意味です。

もし水回りの設備(キッチンやトイレなど)を、メインの排水管(パイプスペース)から遠く離れた場所に移動させようとすると、その距離の分だけ床下の高さを確保しなければなりません。

つまり、「床下の空間に十分な高さがない」場合、物理的に排水管を通すことができず、水回りの移動ができない(または制限される)ということになるのです。

自宅はどっち?移動の可否を分ける「床の構造」

水回りを移動できるかどうかは、マンションの床がどのような構造になっているかで大きく変わります。大きく分けて「二重床」と「直床(じかゆか)」の2種類があります。

1. 二重床(移動しやすい)

コンクリートの床(スラブ)の上に支持脚を立て、その上にフローリングなどの床材を張っている構造です。
スラブと床材の間に空間があるため、そのスペースを利用して排水管を通すことができます。この空間が広ければ広いほど、勾配を確保しやすいため、水回りの移動の自由度は高くなります。

2. 直床(移動が難しい)

コンクリートのスラブに直接、またはクッション材などを挟んで床材を張っている構造です。
床下に配管を通す空間がほとんどないため、元々の水回りの位置から大きく動かすことは非常に困難です。特に古い団地やマンションでは、排水管がコンクリートの床(スラブ)を貫通して階下の天井裏を通っているケース(スラブ貫通配管)もあり、この場合は位置の変更がほぼ不可能です。

画像3枚目 │ マンションの水回りが移動できない理由は?構造の仕組みとリノベの対策

 

なるほど……。床の下に隙間があるかどうかが重要なんだね。

パイプスペース(PS)との距離も重要

間取り図に「PS」と書かれている場所を見たことはありませんか? これは「パイプスペース」の略で、マンションの全階を縦に貫くメインの排水管が通っている場所です。

このPS自体を動かすことは絶対にできません。

水回りの設備を移動させる場合、このPSに向かって排水管を繋ぐことになります。
先ほど解説した「勾配」のルールにより、PSから離れれば離れるほど、床下の高さが必要になります。

  • PSに近い移動: 必要な勾配が少なくて済むため、移動しやすい。
  • PSから遠い移動: 必要な勾配が大きくなるため、床下に十分な高さがないと実現できない。

「移動できない」と言われた時の解決策

構造上、単純な移動が難しい場合でも、工夫次第で希望を叶えられることがあります。諦める前に、以下の3つの方法を検討してみましょう。

1. 床を上げて配管スペースを作る(ステップフロア)

床下の空間が足りないなら、床そのものを高くしてしまう方法です。
キッチンのエリアだけ床を一段高くすることで、その下に配管を通すスペースと勾配を確保します。

  • メリット: 物理的に移動が可能になる。空間にメリハリが生まれる。
  • デメリット: 室内に段差ができるため、バリアフリーではなくなる。天井高が低くなる。

2. 壁の中に配管を通す(ふかし壁)

アイランドキッチンのように部屋の中央に置くのではなく、壁付けのまま位置をずらす場合や、ペニンシュラ(半島)型キッチンの場合に有効です。
壁を少し厚くして(ふかして)、その中に配管を通すことで勾配を確保します。床下にスペースがない直床のマンションでも採用されることがある手法です。

3. 高機能な排水ポンプを使用する

通常の勾配では排水できない場所でも、電動の排水ポンプ(圧送ポンプ)を設置することで、強制的に水を流す方法があります。
これにより、勾配を気にせず水回りをレイアウトできる可能性がありますが、設置コストやメンテナンス、動作音などを考慮する必要があります。また、マンションの規約で禁止されている場合もあるため、事前の確認が必須です。

管理規約の確認も忘れずに
構造的に可能であっても、マンションの管理規約で「水回りの移動禁止」や「フローリングの遮音等級制限」などが定められている場合があります。リノベーション計画の初期段階で必ず確認しましょう。

まとめ:現地調査でプロの判断を仰ごう

マンションの水回りが移動できない主な理由は、「排水管の勾配」を確保するための床下スペースが足りないことにあります。

しかし、「絶対に無理」と決めつけるのは早計です。床上げ(ステージング)などの工夫で実現できるケースも多々あります。
まずは、希望するリノベーションが実現可能か、構造に詳しい専門家に現地調査を依頼することをおすすめします。

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