マンションを購入した際、多くの人が10年分などの火災保険料を一括で支払っていることでしょう。マンションを売却することになったとき、「まだ期間が残っている保険料はどうなるの?」「掛け捨てだから戻ってこない?」と疑問に思う方は少なくありません。
結論から言うと、手続きを行えば、残りの期間に応じた保険料が「解約返戻金」として戻ってきます。
しかし、この手続きは自動的には行われません。売主自身が適切なタイミングで申請しなければ、数百万円単位で損をしてしまうリスクだけでなく、最悪の場合、売却中の火災トラブルで補償が受けられない事態にもなりかねません。
この記事では、マンション売却時における火災保険の取り扱いと、返戻金を確実に受け取るための手順、そして絶対に間違えてはいけない「解約のタイミング」について解説します。

はい、本当です。ただし、待っているだけでは戻ってきません。正しい知識を持って、忘れずに手続きを行いましょう。
マンション売却時に火災保険の「解約返戻金」は受け取れる
マンション売却に伴い、今まで加入していた火災保険を途中解約する場合、未経過期間(まだ過ぎていない保険期間)分の保険料が払い戻されます。これを「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」と呼びます。
なぜお金が戻ってくるのか?
一般的に、マンション購入時の火災保険は「10年一括払い」などの長期契約を結び、保険料を前払いしています。売却によってマンションを手放す=保険の対象物がなくなるため、将来のために前払いしていた分のお金は返してもらえる権利があるのです。
また、火災保険とセットで加入することが多い「地震保険」についても同様です。地震保険は最長5年ごとの更新が一般的ですが、こちらも期間が残っていれば解約返戻金を受け取ることができます。
火災保険の返戻金はいくら戻る?計算の仕組み
「残りの期間が半分なら、支払った金額の半分が戻ってくる」と単純に考えがちですが、実際は少し異なります。
返戻金の金額は、「未経過料率(係数)」を用いて計算されます。
返戻金の計算イメージ
基本的な計算式は以下のようになります。
一括払いした保険料 × 未経過料率(係数) = 解約返戻金
この「未経過料率」は、保険会社や契約プラン、経過年数によって定められています。保険会社の手数料や事務コストなどが差し引かれるため、単純な月割り計算(残月数 ÷ 全期間)よりも、返ってくる金額は少なめになるのが一般的です。
例えば、10年契約で保険料を支払い、ちょうど5年(残り5年)で解約したとしても、支払った額のきっかり50%が戻るわけではなく、40数%程度になるケースが多いです。
正確な金額を知りたい場合は、加入している損害保険会社の代理店やカスタマーセンターに問い合わせるのが確実です。
火災保険を解約して返戻金を受け取るまでの流れ
火災保険の解約は、不動産会社が代行してくれるものではありません。必ず契約者本人(売主)が手続きを行う必要があります。
一般的な手続きの流れは以下の通りです。
1. 保険会社へ連絡する
保険証券を手元に用意し、保険会社の窓口へ電話連絡をします。「マンションを売却するので解約したい」と伝えましょう。
2. 解約書類の記入・返送
後日、保険会社から解約請求書などの必要書類が届きます。必要事項を記入し、捺印して返送します。
3. 返戻金の入金
手続き完了後、指定した銀行口座に解約返戻金が振り込まれます。通常、書類到着から1週間〜2週間程度で入金されます。
質権設定(住宅ローン)がある場合の注意
住宅ローンを利用してマンションを購入している場合、火災保険に金融機関の「質権(しちけん)」が設定されていることがあります。
これは、「万が一火災で家がなくなった場合、保険金をローンの返済に充てる」という権利です。質権が設定されている場合は、勝手に解約することができません。売却によって住宅ローンを完済し、質権設定を解除してから(または銀行の同意を得てから)解約手続きを行うことになります。
最重要!火災保険を解約する「タイミング」の注意点
火災保険の解約で最も注意すべきなのは、「いつ解約日を設定するか」です。ここを間違えると、大変なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
解約日は「引き渡し日の翌日以降」にするのが鉄則
マンション売却では、売買契約を結んでから実際に物件を引き渡す(決済を行う)までに、1ヶ月〜数ヶ月の期間が空くことが一般的です。
もし、「売買契約が終わったから」といって早まって火災保険を解約してしまい、引き渡しまでの間にボヤや水漏れ事故などが起きたらどうなるでしょうか?
所有権はまだ売主にありますので、修復費用はすべて売主の実費負担(無保険状態)となってしまいます。
解約手続きが遅れると損をする
一方で、引き渡しが完了したにもかかわらず、「忙しいから」と解約手続きを後回しにするのも損です。
解約返戻金は、基本的に「解約の申し出をした日(受付日)」を基準に計算されます。
引き渡しから1ヶ月後に連絡した場合、その1ヶ月分は「保険をかけていた」とみなされ、返戻金が減ってしまいます。また、遡っての解約(引き渡し日に遡って解約すること)は、証明書類が必要になるなど手続きが煩雑になる場合や、認められないケースもあります。
ベストなタイミングは、「引き渡し日が確定した段階」で保険会社に連絡し、「引き渡し日(またはその翌日)」を解約日として予約手続きをしておくことです。
マンション売却の火災保険に関するよくある質問
Q. 買主に火災保険の名義変更(権利譲渡)はできますか?
A. 基本的にはできません。
昔の積立型保険など一部の例外を除き、現在の火災保険は物件の所有者(被保険者)が変わる場合、一度解約して、買主が新規に契約を結び直すのが一般的です。
Q. 買い替え先の新居で、今の火災保険を継続できますか?
A. 物件条件が似ていれば可能な場合もありますが、新規契約の方がスムーズです。
「異動」という手続きで住所変更や対象物件の変更を行うことも可能です。しかし、マンションから戸建てへの住み替えや、建物の構造・面積が変わる場合は保険料が大きく変わるため、一度解約して返戻金を受け取り、新居に合わせて入り直すケースがほとんどです。
Q. 解約を忘れて数年経ってしまいました。もう戻ってきませんか?
A. 3年以内なら請求できる可能性があります。
保険法の時効は3年とされています。売却したことを証明する書類(売買契約書や登記簿謄本など)があれば、遡って解約が認められるケースもありますので、諦めずに保険会社へ相談してみましょう。
まとめ:火災保険の解約は「引き渡し」を見届けてから
マンション売却時の火災保険について解説しました。ポイントを整理します。
- 長期一括払いの火災保険は、解約すれば未経過分の保険料が戻ってくる。
- 自動返金ではないため、売主自身で保険会社へ連絡する必要がある。
- 解約のタイミングは「物件引き渡し完了後」にするのが鉄則。
- 引き渡し前に解約すると、万が一の事故で無保険となるリスクがある。
火災保険の返戻金は、数万円〜数十万円になることもあり、引っ越し費用や新居の家具購入費の足しになる大切なお金です。売却手続きの忙しさに紛れて忘れてしまわないよう、ToDoリストに入れておきましょう。
そして、マンション売却において手元に残るお金を最大化するためには、返戻金だけでなく「マンションをいかに高く売るか」が最も重要です。
信頼できる不動産会社を見つけ、適正な価格で売却することが、最終的な手取り額を増やす鍵となります。まずはご自身のマンションが今いくらで売れるのか、査定価格を確認することから始めましょう。
家の修繕・リフォームで損したくない方へ。
あなたの街の適正価格を目的別にチェック!
